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にこにこさん




聡美さんの設定をのせてないのに、ネタばれでござる。

聡美さんがファザコンな理由。

欝です。




ガチャンと、玄関のドアの閉まる音で目が覚めた。
ベットサイドに置かれている目覚まし時計を確認すると、針は6時半ごろを示していた。
こんな時間に、いったい誰が?
一瞬父が仕事に早く出たのかとも思ったが、今日は日曜だ。
昨日父が明日は休みだといっていたことを思い出す。
では母か?
ゴミ出しか、それとも買い物にでも行ったのだろうか?
そう考えているうちに眼がさえてしまった。
ここでうだうだと悩んでいても仕方がない。
下に行って確認すればいいのだ。
そもそも、いつもはドアの開閉音など気にならないはずなのに、なぜ今日に限ってこんなにも考え込んでしまっているのか。
ざわざわと落ち着かないこの気持ちはいったい何なのか。
まだ幼い私には分からなかった。

自分の部屋を出て、廊下の階段を下りる。
降りた先にある玄関を見やると、いつもと違う違和感がそこにはあった。
なにかが違う何なのだろうか。
じっと玄関の床を見つめて考え込めば、その違和感の正体はすぐに分かった。
母の靴がないのだ。
そう、玄関においてあった母のサンダルがない。
ではやはり、先ほどの音は母のものだったのか。
だが、音の正体が分かったというのにも関わらず、胸のざわつきは収まらなかった。
なんなのだ、このざわつきは。
私は理由もないというのに、焦るような手つきで靴箱の扉を開け放った。
そこにも、母の靴はなかった。
それを見た瞬間、背筋にぞわっと悪寒のようなものが走った。
何だ、この嫌な予感は何だ。
私はこのなぞの恐怖感に耐えられなくなり、靴箱の扉を開けっ放しにしてその場を走り去った。

リビングのドアをバンッと音を立てて開く。
いつもはここから見える台所で朝食を作っているはずの母がいない。
当たり前だ、さっき出かけたのだから。
でも、でも、だけど。
シンと静まり返っているリビング、この部屋はこんなにも広かったのだろうか。
私はこんな場所知らない。
自分の家のはずなのに、こんな所、訪れたことがない。
私の家はどこだ?
台所で朝食を作っている美しい母はどこだ?
ソファに座りながらそれを眺めて、私に温かくおはようと言ってくれる父はどこだ?
「お父さん?」
母が出かけたのならば、父はいるはずだ。
私は無意識のうちに父を呼んでいた。
返事はない。
あまりにも静かで、耳鳴りがしそうだ。
目の奥から、なにやら熱いものがこみ上げてきた。
ああ、だめだ、泣いてしまう。
「お、父さ、ん」
「聡美?」
涙声になりながら、もう一度父のことを呼ぶと、こんどは返事が返ってきた。
驚き、後ろを振り返ると、いつもとは違う父がそこにいた。
「お父さん、泣いてるの?」
父はひどく疲れている様に見えた。
いつもの生き生きと楽しそうとしているような眼ではなかった。
虚ろで、なんにも映してはなかった。
私すらも。
「聡美、おいで」
父はそういうと、その場にしゃがみこみ両手を広げた。
私はその腕の中に飛び込み、ぎゅう、と幼いながらも力強く父の体を抱きしめた。
父は大きな腕で私を包み込んだ。
強く。
「お父さん、お母さんは?」
私が父の顔を見上げながらそう尋ねた。
すると、父の顔はひどく歪んだ。
本当に泣いてしまいそうだった。
私は、父のそんな顔が見たくなくて、下を向いた。
「お母さんは・・・」
父はそう言いかけるが、それより先の言葉が出なかった。
「お母さんは?」
私はもう一度尋ねた。
それを聞けば、父が傷つくだろうと、私でも理解できた。
それでも聞きたかった、知りたかった。
母は、どこへ?
父は私をいっそう強く抱きしめた。
「お母さんは・・・もう帰ってこない、どこへ行ったのかは俺もわからない」
父は声を震わせながら、そう言った。
“帰ってこない”
その言葉を私は小さな声で復唱した。
父もまた、小さな声で「ああ」と呟いた。
「お母さんは・・・お父さんが嫌いになっちゃったの?」
それを聞いた瞬間、私を抱きしめる腕がビクッと震えた。
「ああ」
弱弱しい、掠れた声だった。
「お父さんは?」
「ん?」
「お父さんもお母さんのこと嫌いになっちゃった?」
そう尋ねると、沈黙がリビングを包んだ。
父がそこにいるのに、さっきと同じ冷たい、知らない場所のように感じる。
この時間が長い。
「お父さんは・・・好きだよ」
父の声が沈黙を破った。
「でも、お母さんは違うんだって」
父はそういうとそれっきり何も言わなくなってしまった。
私はそれまで俯かせていた顔を上げ、父の顔を見上げた。
すると、ぽたぽたと私のほほに水がたれた。
父は泣いていた。
悔しそうに、悲しそうに、その顔を歪めて。
その表情を見たときに、胸にわいた気持ちを、幼い私は理解することが出来なかった。
そうこの黒くてどろどろとしたこの感情を。

ああ、今なら分かる、その気持ちが何なのかが。
黒くてどろどろとした、汚い、恐ろしいこの気持ちが。
そう、これはきっと殺意だ。
私は父を、私を裏切った母に、殺意を感じていたのだろうと。
許せない、許せないと恨みを向けて。
すでに顔も忘れてしまった母に、汚い殺意を。
殺してしまいたいと、そう願い。
どろどろと腐っていく内側。
それでも私は笑うのだ。
なにが起こっても笑うのだ。

ああ、できることなら神様、あの憎き女に罰を。
あの裏切り者に罰を。
きっと今なら、その憎き女ですらも、笑ってみられるような気がするんだ。

   

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2013年05月11日 | original-短編 | こめんと 1件 | とらば 0件 | とっぷ

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2013年05月21日 / #【編集

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