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東奔西走



2013年初めての更新です。

年明け前に部活の部誌用に製作していたものです。

上げるって言ってたのに遅くなってすみませんでした。

ホラゲーのほうも、もう完成しているので、

そろそろ上げると思います。




【東奔西走】… とうほんせいそう

   あちこち忙しく走り回ること





ほとんど生徒のいない放課後。訳あって職員室に呼び出されて長い時間先生の話を聞かされ、こんな時間まで残された自分、佐藤ゆずるは、一人静かに教室までの廊下を歩いていた。
本当ならさっさと家に帰ってしまいたい所だが、教室にかばんを置きっぱなしにしてしまったため、非常に面倒くさいが荷物を取りに行かなければならない。別にかばんだけならばそのまま置いて帰ってもいいのだが、職員室に行く際に自分の携帯も一緒に置いてきてしまったのだ。さすがに携帯を置いて帰る訳にはいかなかった。
歩きながら窓の外を眺めると、空はもう茜色に染まっていた。

東奔西走

 ガララッ。教室の扉を開き、中を覗く。案の定そこには誰もいなかった。ガラーンとした教室に入り、自分の机まで歩く。かばんをとってさっさと帰ろう、そう思って机を見た。が、そこに自分の荷物はなかった。
 あれ?と思い、机を凝視した。が、そこににあったのはかばんではなく、一枚のメモ用紙と写真。
そのメモ用紙には「お前のかばんは預かった。返してほしければ写真の場所に来い。」と、書かれていた。そして、もう一枚の写真に写っていたのは彫刻の写真。どこかの棚の上に置いてある首のない胴体だけの彫刻の写真だった。
 正直イラッとした。おそらくこのいたずらの犯人は俺をからかって楽しんでいるのだろう。自分の周りはこういうくだらないことを面白がってする奴らがたくさんいる。普段からもまるで小学生のような馬鹿らしいいたずらを休み時間でも、授業中でもやられたことがある。高校生なんて皆そのようなものかもしれないが…。
 「この写真、美術室かな?」
この彫刻はよく美術室で見かけた気がした。普段は意識しないからうろ覚えだが…。まぁ、彫刻と言えばほとんどは美術室だろう。
とにかく、早く帰りたいという気持ちでいっぱいだった俺は荷物を取り戻すために美術室のある三階へ早足で向かった。ついでに見つけたら一発殴ってやろう。



 もう誰もいないはずのこの時間だが、美術室からは光が漏れていた。もうこれは誰かがここにいるという立派な証拠だ。少しだけ開いていた扉に手をかけわざと大きな音をたてて扉を全開にした。
 スパーンッ!!という大きな音がたち、その音に驚いたのか、中にいた生徒が一人、ウワッ!?と悲鳴を上げた。なんだか見覚えのある後ろ姿のような気がした。
「びっくりした…」
その男子生徒がため息をつきながらこちらに向く。その生徒はやはり自分の知り合いだった。
「成瀬、携帯返せ」
見慣れた友人の顔を見て、単刀直入にそう要求した。
だが、その様子を見てなぜか成瀬はフッ…と鼻で笑った。ムカツク…。
「残念だが、ここあるのはかばんだけだ、中身は全部抜き取った」
そうにやにやと人を馬鹿にするような表情をしながら言って、中身の入っていないかばんを俺に差し出した。
「何してんの!?何その顔?むかつく、中身はどこだよ!!」
「はい」
俺が乱暴にかばんを成瀬から取り上げると、成瀬は自分の制服のポケットからある一枚の紙を取り出して俺に渡した。少しイライラしながらもその四つに折りたたんである紙を受け取る。
「何この紙、俺はかばんの中にあったものを返せって言ったんだけど」
「ヒントだよ」
その紙はさっきの同じく写真だった。写真に写っていたものは自動販売機。周りの風景からして中庭に設置されている自販だろう。
「何?行けってことか?」
「まぁまぁ、荷物返してほしいんだろ?」
 そりゃそうだけど…とぶつぶつと呟いた。美術室に行けば済むと思っていたが故、またさらに続くと思うとやる気が出ない。それでも、やはり携帯は必要だ。ないと色々不便だし。
 「ほらぁ、さっさと行けよ」
成瀬は面倒くさそうに俺に言うと、床においてある自分の荷物を取って出口へと向かった。こいつ、勝手に帰ろうとしてやがる。
 「おい、成瀬」
「ん?何、」
名前を呼ぶと、成瀬はこちらに振り向いた。俺はその顔を正面からじっと見つめながら拳に力をこめた。
「おい、何だよゆずる」
「くたばりやがれ」
「えっ?ぐはぁっ!!」
腹に一発決めてやった。



 成瀬を一回殴っても収まらなかったこの怒りに苛立ちを抑えきれないまま、ヒントの写真に写っていた中庭の自販まで足を運んだ。一階の廊下から中庭を見るが、そこの自販には人影は見られなかった。もしかして荷物はなくてヒントだけ置いてあるのだろうか、と少し嫌な予感を感じながらも、廊下の窓を開けて、そこから外に出た。いちいち外履きに履き替えるのも億劫なので、上履きのまま芝生の上を進む。
 自販に近づき、辺りを見回した。誰もいない、ヒントも置いていない。もしかして成瀬に騙されたのか?さっきからずっと苛々していたのに、さらにまた苛々が増した。季節は冬。さっきまで茜色だったはずの空はもう真っ暗だった。しかもとてつもなく寒い。登校して来たときに着ていた上着は荷物として一緒に奪われている。そのため今はシャツとカーディガンを着ているだけだ。まさかブレザーまで奪われるとは…。
 どうせなら何か暖かいものでも飲もうかと考えたが、そこで財布も取られていたことを思い出した。
「…明日、一人ずつ鼻フック決めてってやる」
「何一人でそんな恐ろしい計画を考えている」
 口からもれたその言葉に返してくる声が聞こえた。それに驚きすぐさま後ろを振り返る。 と、見慣れた大男が立っていた。
「桐斗、お前いつの間にそこにいた」
「いや、さっきまで寒いから中にいた」
 桐斗はそういうと俺の前に何かを差し出した。
「貴様のものだ」
俺の教科書だった。普段置き勉をしているせいで持って帰る量が少ないため、三冊しかなかったが…。
「ん」
適当に返事をし、受け取ったそれをさっき成瀬から返してもらったかばんに適当に突っ込んだ。すると、ヒュウと風がふきその寒さで体が震えた。ああ、さっさと全部取り返したい。
 「受け取ったのなら、さっさと次のものをとりに行け」
次のヒントをもらおうと桐斗を見上げたら、鋭い目つきでそう言われた。
「俺だってそうしたいんだよ、さっさと次のヒントよこせ」
手を前に出して、早くしろと催促する。こんな寒い中にずっといたら死んでしまいそうだ。今はとにかくはやく中に入りたかった。
 「ほら」と桐斗が言って、写真を渡した。俺はその写真を確認せずにポケットに突っ込んだ。中身は校舎内に入ってからでも確認できるし、寒いし、寒いし、寒いし・・・。
 「じゃ、俺は次の場所に行くから」
とにかく中に入ろうと、背を向けてさっき出てきた窓まで歩き始めた。
「何だ、此処で確認しないのか?つまらんな」
「うるせー、寒いんだよ」
後ろから話しかけてくる桐斗に適当に返事をし、歩き続ける。後ろでなにやら「はぁ・・・」とため息をつくような声が聞こえた。本当ならばここで「ため息つきたいのは俺のほうだ」と言い返したいところだが、もう何もかもが面倒くさくなった。
 「おい、これやる」
そう桐斗が言うと、俺の顔の前に缶コーヒーが現れた。とにかく寒かった俺にとってそれは、すごく魅力的に見えた。マジでか。くれるのか・・・。おもわず飛びつきそうになったが、その衝動を抑えて空いている右手で缶コーヒーを受け取った。
「今更俺は親切ですアピールか?それで読み手が騙せると思うなよ、中二病の癖に」
「黙ってろ、素直に礼でも言ったらどうだ、リア充」
「褒め言葉か?彼女いるのが羨ましいのか?」
「言ってろ」
 すると桐斗は俺とは逆に昇降口の方へと歩いていった。おそらくもう用事は済んだということなのだろう。これだけのために校舎に残っているなんて、みんなよっぽど暇なんだろうな。
 今日礼を言いそびれたし、明日缶コーヒー奢ってやろう。



 窓から校舎の中に入ると、壁にさえぎられて風がやんだ。中に入るだけでもだいぶ暖かく感じる。その暖かさに安堵して、ほぉっと息をついた。そして忘れずに窓の鍵を閉める。泥棒が入っても困るし。
 壁に寄りかかってポケットから四つに折り曲げられた写真を取り出した。開いて中を見ると、そこは空の見える風景だった。
「屋上か」
学校でこんな空が拝める場所は屋上しかない。そう思って、階段に向かって歩き出した。それにしても一回目は美術室で三階、二回目は中庭で一階、三回目は屋上で一番上、見事に階段を往復している。もう本当に帰ってしまいたい。疲労がハンパないよ…。
 もう帰りたいと、ひたすらそう思いながら階段を上っていたら、いつの間にか屋上のドアの前に着いていた。
 次は誰がいるんだろう。まあ誰だろうと関係ないか、さっさと荷物を奪って次に行こう。ドアノブに手をかけて、扉を押した。普通は鍵が閉まっているはずだけど、今回は鍵はなく、少し重い扉はゆっくりと開いた。
 屋上に入った瞬間に風が吹いた。また寒い思いをしなくてはいけないのか…。寒さで震える体を少しでも温めようとさすった。息を吐くと、白かった。
 「ゆずるくん、寒そうだね」
横から声が聞こえ、そっちに振り返るといつものやたらとウザイ友人がそこにいた。
「なんだ、みーくんか」
「何だってひどくね?」
「もういいからさ、さっさと荷物とヒントよこせ」
フェンスに寄りかかっている水樹(みーくん)に近づき、催促する。我ながら不良のカツアゲの様だと思ったが、そんなことはもうどうでもいい。
すると、さっきよりも強い風が吹き、また体が震えた。
「はい」
そう言って水樹が俺の前に差し出したのは、俺が登校してきたときに着ていた上着だった。俺はそれを見ると、すぐさま水樹の腕からそれを奪い取り、上着を着た。
「あーあったけぇ…」
「ヒントも欲しい?」
「よこせ」
「はいはい」
水樹は自分のポケットから一枚の写真を取り出すと、俺に渡した。写真は、教室だった。だけど、教室なんてどこも同じようなものだ、この写真が何年何組の写真なのかまでは俺には分からなかった。
「おい、これだけじゃ解んねーぞ、何年何組だよここ」
「えー、そこはわかろうよ、俺は解るよ」
「だったら教えろよ」
水樹は「教えて欲しい?」と俺にドヤ顔で聞いてきた。その顔がやたらとむかついたので、俺よりも高い位置にあるその顔の左頬をつねった。
「痛い痛い!ひどい」
「いいから教えろ」
「何この人!!もうただの不良じゃん!!」
左手でつねられた頬を押さえながら水樹はもう片方の手でポケットを探り、さっきとは違うもう一枚の写真を取り出し、俺に渡した。
 「第二ヒントだから、もうないからね」
そんなに強くつねったつもりはなかったが、水樹は涙目になっていた。そんなに痛かったのか?
 渡された写真に写っていたのは、教室の黒板の写真だった。その黒板には真ん中に大きく赤いチョークで「1-B」と書かれていて、周りにはクラス全員の名前が色とりどりに書かれていた。その中には自分の名前も含まれている。覚えがある、これは文化祭前日に書いた落書きだ。
 「結局また戻るんじゃん」
はぁー、とため息をついて、水樹に背を向けて扉まで戻る。扉を開けて中に戻ろうとしたら、後ろから水樹が「がんばれー」と叫んだのが聞こえた。
 面倒くさいから返事はしなかったが、片手を適当に挙げることでそれに答えた。



 また階段を一番下まで下り、今度は最初のスタート地点だった自分のクラスまで歩く。もう外は真っ暗だ。これは帰るとき車に気をつけなければ。油断していたら轢かれてしまいそうだ。まぁ本当ならばこんな時間まで学校に残ることはなかったのだが、全ては奴らのせいだ、と今まで会った三人の顔を思い出す。
 一年の教室の近くに着くと、教室から聞き覚えのある声が二つ聞こえてきた。やたらと楽しそうなその声にイラッとして、成瀬のときと同じように思いっきり音を立てて扉を開けると、中にいた二人は「うわーーーーッ!!」と情けない声を上げた。
 「ゆずるくん怖いわぁ、びっくりしたやないか」
「黙れ拓行、変な関西弁話しやがって」
「それは作者のせいや」
「おー、ゆずるくんお疲れー」
「おいこら望、さっさと荷物を返しやがれコノヤロー」
苛々が限界まで達した俺は、中でのんきに座っていた望の胸倉をつかみ、前後にゆすりながら要求した。
「待って待って!これじゃあ渡せないから!!」
「よこせ」
頭を前後にガクガクさせながら望が言ったが、右から左に受け流した。すると、それを見かねた拓行が止めに入って来た。
「ゆずるくん!!返すから、返すからやめたげてぇ!!」
その台詞を聞いて望から手を離すと、望はゲホゲホと何回か咳き込んだ後ポケットから見覚えのあるデザインの携帯を取り出した。真っ白な色に、青い鳥のモチーフのストラップ、俺の携帯だった。望の手から携帯を受け取り、ズボンのポケットに落ちないように入れる。
 すると今度は拓行が横から、その手に持った物でペチペチと俺の頭を叩いた。
「何だよ?」
「ゆずるくん、これも忘れちゃあかんでー」
俺の顔の前でその手に持っていたものをひらひらと振ってみせる。俺の財布だ。拓行は俺の手を勝手にとり、子供を相手にするかのように、財布をその手に握らせた。
 そして、その財布を受け取ったところで気づいた。これで俺の荷物は全部だ。
「お疲れ様でしたーッ!!」
望がいきなりそう叫んだ。なぜか右手を額にあて、敬礼をしている。拓行を見ると、便乗したのかこちらも敬礼をしていた。
 「これでもう帰れるやろ、さっさと行き」
「はぁ?急に何だよ…」
なぜだか拓行と望が二人で俺の背を押し始めた。俺は押されるままに前に進んだ。理由はわからないが、俺を早く帰らせたいらしい。
 出口に近づいたところで、二人がドンッと俺を突き飛ばした。俺はそのまま廊下に顔から倒れこんだ。思いっきり打ち付けた鼻を押さえながら、二人を睨み付けるが、二人はやたらとニヤニヤしながら俺のこと見ていた。そして、一枚の写真を俺の前に置いた。
「最後の荷物だよ、取りに行けば?」
「はぁ?」
 「どういうことだ?」と言おうとしたが、言う前にピシャンと扉が閉じられた。こじ開けて聞いてやろうかとも思ったが、そこまでするのも面倒くさいと思い諦めた。足元に置かれた写真を広い、見てみると、校門が写っていた。



 あたりは真っ暗で、もう星もでていた。昇降口を出て、まっすぐと校門に向かう。この季節にこの時間では、上着を着ていても寒かった。
 歩きながらも二人の言った「最後の荷物」の意味を考えたが、結局わからなかった。自分のかばんの中も確認したが、足りない物はない。それとも何か自分が忘れているのだろうか。思考をめぐらせるが、答えは出ないままだ。
 周りには誰もいないようで、自分の足音以外に何も聞こえない。ザッザッと地面をこする音に耳を傾けて歩いていた。すると、急にその音以外の音が耳に飛び込んできた。
「ゆずるくん」
無意識のうちに下を向いていた顔を上げると、前には自分の恋人の姿があった。
「えっ、何で?」
「一緒に帰ろう」
そう言って俺の横に並ぶと、同じ速度で歩き始めた。
 なるほど、最後の荷物ってこういうことか。今やっと理解できた。隣で笑いながら俺に話しかける彼女の姿を見ると、さっきまで歩き回っていた疲労が癒されていくような気がした。
 明日、全員軽くチョップするぐらいで許してやろうかな。



 「星空の下で下校デートって、青春ドラマかよ」
 ゆずるたちが二人並んで下校しているところを屋上から眺める、四人。
「今時そんな青春ドラマあるかよ」
「そういえば桐斗くんはどこ行ったんやろか?」
「先に帰ったよ、上から見てた」
「マジかよ、せっかくこれから非リア充の会を開こうかと思ってたのに…」
「何それ」
「あーあ、リア充とかマジないわー」
…。
「あー!!彼女欲しいッ!!」

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2013年01月23日 | original-短編 | こめんと 1件 | とらば 0件 | とっぷ

コメント


美術室でスタンバってました_(:3」∠)_

非リア4人への愛しさと切なさと心強さと。
ご馳走様です。

2013年01月25日 / 柚李かなと #-URL【編集

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